「好きなこと」と「仕事」の距離感

「好きなこと」を「仕事」で生かすには、どうしたらよいのか。 さまざまな経験をもつふたりの言葉に、ヒントがあるかもしれません。

mountainman | 店長

佐藤 拓也

Takuya Sato

1984年生まれ、札幌市出身。イタリアン、和食の店で調理技術を磨く。「中目卓球ラウンジ」の長谷川店長に誘われ、2012年に入社。「mountainman」の立上げに深く関わる。

山猫バル | キッチン担当

鈴木 百誉

Momoyo Suzuki

1984年生まれ、苫小牧市出身。短大卒業後、雑貨を扱う企業に就職。東京勤務、店長職を経験し、Uターン。おいしいものを提供する仕事を目指し、2018年に入社。通称:ももさん。

玉ねぎのみじん切りから
教えてもらった
(鈴木)

佐藤

自分はずっと飲食業界で働いてきたけど、ももさんは、雑貨の世界に長くいたのに、30歳過ぎてからマンマに入社したんだって?それは、どうして?

鈴木

私は雑貨が好きだったので、短大卒業後は雑貨を扱う会社に入社したんです。最初は札幌勤務で、その後異動になった東京で約8年。店長までなったものの、東京を離れたくなって札幌に戻してもらいました。振り返れば、東京時代はふだん食べるものに満足できなくて、北海道のものっておいしいんだなぁといつも思っていて。せっかくUターンしたんだもの、おいしいものを扱える場で働いてみようと転職先を探しているうちにマンマをみつけ、「山猫バル」で働くようになったんです。

佐藤

マンマのことは知ってた?

鈴木

「さっぽろオータムフェスト」に出店していたので、知ってましたし、道産にこだわってる印象もありました。マンマに入社できたのは良かったんですけど、私は調理のことをなんにも知らなくて、ねえさんやたけしさんに玉ねぎのみじん切りから教えてもらいました。そこから3年が過ぎ、今は冷菜担当なんですけど、パスタも手伝わせてもらえるようになりました。

仕事としてやるからには、
「好き」だけでは無理
(佐藤)

鈴木

佐藤さんが店長を務める「mountainman」は、いつ頃からオープンの準備を始めたんですか。

佐藤

2年前かな?オーナーがエアストリームを買ったのが発端で、最初はキッチンカーにする予定だった。でも、牽引するのが難しいことがわかって、車は動かさずに焚火カフェを開こうという話になり、そうこうしているうちにコロナになり、緊急事態宣言は出るわ、冬がくるわで、本格的始動は2021年の雪どけの頃。そこから車の改造を一気にやって、アウトドアレストランとしてオープンさせたわけ。森の中で朝食を食べていただくことがメインのお店だけど、あの広い敷地をアウトドアのプラットフォームにしたいんだよね。

鈴木

アウトドアが趣味なんですよね、佐藤さんは。

佐藤

そう。だけど、組織の中で仕事としてやるからには、自分の好きなものだけで成り立たせようとしたら無理、できない。自己満足で終わる危険もあるし。

鈴木

私も前職で、好きなものに囲まれて働きたいという希望とのギャップは経験しました。

佐藤

だよね。だから、自分の好きなことより、自分が考えなければいけないことを考えてるほうが多いね。

ほんとのこと言うと、
流行ってほしくない
(佐藤)

鈴木

私はホールで接客することもあって、おすすめのお酒を尋ねられることがあるんですね。私なりに推しのお酒があるんですけど、お客様のご要望とは合わないと感じたら、その推しはそっとしまって(笑)。

佐藤

「山猫バル」は、料理は日々アップデートしていかなければいけないし、料理に合う飲み物も相応の種類を入れ替えながら、揃えないといけないでしょ?

鈴木

ワインからオリジナルドリンクまで50,60種類はあるので。実は、私はワインのことは全然知らなくて、お店に入ってからイチから教わったんです(苦笑)。

佐藤

そうなんだ(笑)。「mountainman」は、ナチュールワインやクラフトビールなどと、誰もが好きなベーコンエッグ、ハンバーグといった普遍的なメニュー。

鈴木

ただ、環境の唯一無二感はすごいですよね。

佐藤

うん。ゆっくり時間を過ごせて、贅沢な気分になれる。お客さんには、あの場所自体にお金を払っていると思ってほしいくらい。ただ、ほんとのこと言うと、流行ってほしくないんだよね。流行ると廃れるからさ。

鈴木

わかります、その感じ。「mountainman」がそれだけ大事だと。でも、もう流行ってるかも(笑)。